夏は涼しく、冬は暖かい。エアコンが作り出す完璧にコントロールされた室内環境は、私たちに計り知れない快適さをもたらしてくれます。しかし、その快適さが、皮肉にも人を無気力にさせ、社会から孤立させ、やがてゴミ屋敷を生み出す一因になっているとしたら、あなたはどう思うでしょうか。人間は、本来、暑さや寒さといった自然環境の変化に対応しながら生きてきました。季節を感じ、天候に合わせて行動を変えることは、生活にリズムと刺激を与えます。しかし、高性能なエアコンが一年中快適な室温を保ってくれるようになると、私たちは意識せずとも、その快適な「シェルター」の中に留まる時間が長くなります。猛暑の日に汗をかいて買い物に行く必要も、寒い日に厚着をしてゴミを出しに行く必要も、以前よりは感じにくくなるかもしれません。この「外出の機会の減少」が、社会との接点を希薄にし、緩やかな孤立へと繋がっていくのです。特に、一人暮らしで他者とのコミュニケーションが少ない場合、この傾向は顕著になります。外に出なければ、他人の目を意識することもありません。身だしなみや部屋の片付けに対する関心が薄れ、徐々にセルフネグレクトの状態に陥っていく。ゴミを出すのが面倒になり、一つ、また一つと部屋に溜め込んでしまう。そして、部屋が散らかれば散らかるほど、人を招き入れることができなくなり、さらに孤立が深まる。この負のスパイラルを、エアコンの快適さが静かに後押ししている可能性があるのです。エアコンは、私たちを外の過酷な環境から守ってくれるシェルターであると同時に、社会から自らを隔絶する見えない牢獄にもなり得ます。その快適さに依存しすぎず、意識的に外の世界と繋がることが、心身の健康と、健全な住環境を維持するために不可欠なのかもしれません。