親などが亡くなり、実家がゴミ屋敷だった。相続放棄をすれば、厄介な問題から解放されると考えるのは自然です。しかし、もし相続放棄をせずに、ゴミ屋敷を相続してしまった場合、具体的にどのようなリスクが待ち受けているのでしょうか。安易な相続が招く可能性のある負担や責任について解説します。最も直接的で大きなリスクは、やはり「高額な片付け費用」です。ゴミ屋敷の清掃は、通常のハウスクリーニングとは全く異なり、専門業者に依頼するのが一般的です。ゴミの量、種類、搬出経路、必要な作業員の人数、特殊清掃(消臭・消毒・害虫駆除など)の有無などによって費用は大きく変動しますが、数百万円単位の費用がかかることも決して珍しくありません。この費用を相続財産で賄えない場合、相続人が自己資金で負担しなければなりません。次に、「建物の修繕・解体費用」のリスクです。ゴミ屋敷となっている家屋は、長年適切な管理がされておらず、老朽化が進んでいるケースが多く見られます。雨漏りやシロアリ被害、構造部分の腐食などがあれば、大規模な修繕が必要となり、さらに費用がかさみます。もし、建物の状態が悪すぎて住むことも貸すこともできず、更地にして売却するしかない場合は、解体費用も必要になります。これも数十万から数百万円の負担となる可能性があります。「固定資産税の支払い義務」も継続的に発生します。ゴミ屋敷であっても、不動産を所有している限り、毎年固定資産税・都市計画税が課税されます。利用価値のない不動産のために、税金を払い続けなければならない状況は、経済的にも精神的にも負担となります。「損害賠償責任のリスク」も無視できません。ゴミ屋敷を放置した結果、例えば、強風で屋根の一部が飛んで隣家を傷つけたり、不審火によって火災が発生し延焼したり、害虫や悪臭が原因で近隣住民の健康被害を引き起こしたりした場合、所有者として損害賠償責任を問われる可能性があります。特に、特定空き家等に指定されると、行政から改善勧告や命令が出され、最終的には行政代執行(強制解体など)が行われ、その費用を請求されるリスクもあります。これらのリスクを総合的に考えると、ゴミ屋敷を相続することは、想像以上に大きな負担を伴う可能性があります。相続放棄の期限である3ヶ月以内に、これらのリスクを十分に調査・検討し、冷静な判断を下すことが極めて重要です。