社会福祉の現場で働くケースワーカーは、時として想像を絶するような困難な状況に直面します。その中でも、ゴミ屋敷への訪問は、精神的にも肉体的にも大きな負担を伴うことが多い業務の一つです。玄関のドアを開けた瞬間に鼻を突く強烈な異臭、足の踏み場もないほど積み上げられたゴミの山、そしてその中でかろうじて生活している住人の姿。それは、単に「散らかった部屋」というレベルをはるかに超えた、生活空間の崩壊とも言える光景です。積み上げられたゴミは、生活ゴミだけでなく、衣類、新聞、雑誌、得体の知れない容器など多岐にわたります。中には腐敗した食品や排泄物が放置されていることもあり、衛生状態は極めて劣悪です。害虫やネズミが発生していることも珍しくなく、感染症のリスクも常に伴います。物理的な危険も潜んでいます。高く積み上げられたゴミが崩れてくる危険性、床がゴミの重みで抜け落ちる可能性、そして漏電や火災のリスク。ケースワーカーは、自身の安全を確保しながら、慎重に家の中に入り、住人の安否を確認し、状況を把握しなければなりません。しかし、最も心を痛めるのは、そのような環境で暮らす住人の姿です。多くの場合、住人は高齢者や障がい者、あるいは精神的な問題を抱えている方々です。社会から孤立し、誰にも助けを求めることができずに、セルフネグレクト(自己放任)の状態に陥っています。栄養状態が悪く痩せ細っていたり、病気を患っていても医療機関にかかれなかったりするケースも少なくありません。ケースワーカーが声をかけても、長年の孤立からか、心を閉ざしてしまっていることもあります。「放っておいてくれ」「自分で何とかする」と支援を拒否されることも日常茶飯事です。それでも、ケースワーカーはその人の命と尊厳を守るために、根気強く関わり続けなければなりません。ゴミ屋敷の現実は、単なる片付けの問題ではなく、貧困、孤立、病気、精神的な問題など、現代社会が抱える様々な課題が凝縮された現場なのです。ケースワーカーは、その厳しい現実に日々向き合いながら、解決への糸口を探し続けています。
ケースワーカーが見たゴミ屋敷の厳しい現実