相続財産にゴミ屋敷が含まれている場合、多くの人がまず検討するのが「相続放棄」でしょう。しかし、状況によっては相続放棄以外の選択肢が適している場合もあります。ここでは、相続放棄以外の主な選択肢として「限定承認」と「相続財産管理人の選任」について解説します。まず「限定承認」とは、被相続人の借金などのマイナスの財産が、プラスの財産の範囲内でどれだけあるか不明な場合に有効な手続きです。相続したプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を弁済すればよく、もしマイナスの財産がプラスの財産を上回っていても、相続人が自己負担する必要はありません。逆に、弁済してもなおプラスの財産が残れば、それを相続することができます。ゴミ屋敷の場合、片付け費用や潜在的な負債が、他のプラスの財産(預貯金など)を上回るかどうか不明な場合に検討の余地があります。ただし、限定承認は、相続人全員が共同で行わなければならず、手続きが非常に複雑で時間もかかります。また、相続放棄と同様に、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。専門家への依頼が必須となるケースが多く、その費用も考慮に入れる必要があります。次に「相続財産管理人の選任」です。これは、相続人が誰もいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合に、家庭裁判所によって選任される人が、相続財産を管理・清算する制度です。相続放棄をした相続人は、原則としてゴミ屋敷の管理義務から解放されますが、次の相続人や相続財産管理人が管理を開始できるまでは、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない義務が残ることがあります(民法940条)。この管理義務から完全に免れるために、相続放棄をした上で、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てる、という方法が考えられます。相続財産管理人は、相続財産を調査・換価し、債権者への弁済などを行い、最終的に残った財産を国庫に帰属させます。ただし、相続財産管理人の選任申立てには、予納金が必要となり、数十万円から百万円以上かかる場合もあります。ゴミ屋敷の状況、他の財産の有無、自身の経済状況、他の相続人の意向などを総合的に考慮し、相続放棄、限定承認、相続財産管理人選任といった選択肢の中から、最も適切な方法を専門家とも相談しながら決定することが重要です。