学校から帰ると、玄関には靴が散乱し、リビングは脱ぎ捨てられた服や食べかけの容器で埋め尽くされている。自分の部屋も、教科書やプリント、趣味の物が積み重なり、足の踏み場もない。そんな「ゴミ屋敷」と呼ばれる環境で、思春期の真っ只中である高校生活を送る子どもたちがいます。彼らが抱える困難は、単に「家が散らかっている」というレベルではありません。まず、物理的な生活空間の問題があります。勉強に集中したくても、机の上が物で溢れていてスペースがない。ゆっくり休みたいと思っても、寝る場所すら清潔とは言えない。自分の持ち物を管理するのも一苦労で、学校に必要なものを探し出すだけで時間がかかってしまうこともあります。友達を家に呼びたくても、この状況を見られるわけにはいかない。それは、高校生にとって大きなストレスであり、友人関係にも影響を与えかねません。衛生面での問題も深刻です。ホコリやカビ、場合によっては害虫が発生している環境は、健康を害するリスクがあります。アレルギーや呼吸器系の不調を抱える子もいるかもしれません。また、常に散らかった空間にいることで、精神的な負担も計り知れません。家にいても心が休まらず、イライラしたり、無気力になったりすることもあります。「どうして自分の家はこうなんだろう」という疑問や、「こんな家、恥ずしくて誰にも言えない」という羞恥心。自己肯定感が低くなり、将来への希望を見失いそうになることもあるでしょう。親が原因でゴミ屋敷になっている場合、親に対する複雑な感情も抱えます。反発したい気持ちと、親を見捨てられない気持ちの間で揺れ動くことも。ゴミ屋敷で暮らす高校生は、声に出せない多くの悩みを抱え、見えない壁の中で孤立している可能性があります。彼らの存在と困難さに、周囲の大人はもっと目を向ける必要があるのではないでしょうか。