ゴミ屋敷の住人の多くは、長年の孤立や様々な困難な経験から、他者に対して強い不信感や警戒心を抱いていることがあります。そのため、支援を申し出るケースワーカーに対しても、心を閉ざし、関わりを拒否することが少なくありません。このような状況で、いかにして相手の心を開き、信頼関係を築いていくかが、ケースワーカーにとって重要な課題となります。まず大切なのは、「傾聴」の姿勢です。相手の話を否定したり、遮ったりせず、じっくりと耳を傾けること。「大変でしたね」「つらかったですね」と、相手の気持ちに寄り添い、共感的な理解を示すことが、信頼関係の第一歩となります。ゴミ屋敷という状況だけを見て一方的に「片付けましょう」と迫るのではなく、なぜそうなってしまったのか、本人が今どんな気持ちでいるのかを理解しようと努める姿勢が重要です。次に、「受容」の態度です。ゴミ屋敷の状態や、本人の言動を頭ごなしに否定するのではなく、まずはありのままを受け入れること。「どんな状況であっても、あなたの味方ですよ」というメッセージを伝えることが大切です。もちろん、衛生面や安全面での問題は指摘する必要がありますが、それは相手を非難するためではなく、相手の健康や安全を心配しているからだという気持ちを伝えるように心がけます。そして、「自己決定の尊重」です。支援は、あくまで本人の意思に基づいて進められるべきです。ケースワーカーが一方的に計画を立てて押し付けるのではなく、本人と一緒に考え、本人が自分で選択し、決定できるようにサポートします。「どうしたいですか?」「何かできることはありますか?」と問いかけ、本人の主体性を引き出す関わりが求められます。たとえ小さな一歩であっても、本人が自分で決めて行動できたことを認め、肯定的にフィードバックすることも、自信を取り戻すきっかけとなります。また、訪問の際には、清潔な身なりを心がけ、威圧感を与えない柔らかな態度で接することも大切です。定期的に訪問し、短い時間でも顔を見せて声をかけるなど、地道な関わりを続けることで、少しずつ警戒心が解け、信頼関係が育まれていきます。ゴミ屋敷の住人との対話は、根気と忍耐が必要です。しかし、ケースワーカーが誠実に向き合い続けることで、閉ざされた心の扉が開き、支援への道筋が見えてくるのです。