相続財産にゴミ屋敷が含まれていた場合、相続放棄をすべきか否か、悩む方は多いでしょう。相続放棄にはメリットがある一方で、デメリットや注意点も存在します。両者をよく理解し、自身の状況に照らし合わせて慎重に判断することが重要です。まず、相続放棄の最大のメリットは、被相続人(亡くなった方)のマイナスの財産を引き継がなくて済むことです。ゴミ屋敷の場合、これは非常に大きな利点となります。莫大な片付け費用や修繕費用、未払いの税金や借金などがあったとしても、相続放棄をすれば、これらの支払い義務から解放されます。また、ゴミ屋敷という不動産そのものに対する管理義務や、それに伴う固定資産税の支払い義務も負わずに済みます。将来的に発生するかもしれない、ゴミ屋敷が原因となる損害賠償責任のリスクからも逃れることができます。精神的な負担が軽減されることも大きなメリットです。ゴミ屋敷の片付けという、肉体的にも精神的にも過酷な作業から解放され、故人の遺した問題に煩わされることなく、自身の生活に集中することができます。一方で、デメリットも存在します。最も大きなデメリットは、プラスの財産も全て放棄しなければならないという点です。ゴミ屋敷以外に、預貯金や有価証券、価値のある不動産などがあったとしても、相続放棄をすれば、それらも一切受け継ぐことができません。ゴミ屋敷の片付け費用や負債額と、プラスの財産の価値を比較検討し、どちらが大きいかを冷静に判断する必要があります。また、相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったとみなされ、相続権は次の順位の相続人に移ります。例えば、第一順位の子ども全員が相続放棄をすると、第二順位である親(被相続人の父母や祖父母)が相続人となり、親もいなければ第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。ゴミ屋敷という厄介な問題を、他の親族に押し付けてしまう形になる可能性があり、事前に相談するなど、親族間のコミュニケーションが重要になる場合があります。さらに、相続放棄をしても、場合によっては管理責任が残る可能性がある点にも注意が必要です(詳細は別記事で解説)。ゴミ屋敷の相続放棄は、負の遺産から解放されるという大きなメリットがありますが、失うものや他の相続人への影響も考慮し、総合的に判断することが求められます。