ゴミ屋敷とセルフネグレクト支援の現場から

福祉や医療の現場では、セルフネグレクト(自己放任)が原因でゴミ屋敷状態になったケースに日々向き合っています。その支援は一筋縄ではいかず、多くの困難が伴います。支援の現場から見えてくる、セルフネグレクトとゴミ屋敷問題の現実についてお伝えします。まず直面するのは、本人との信頼関係構築の難しさです。セルフネグレクトの状態にある人の多くは、社会から孤立し、他者への不信感を抱いています。支援者が訪問しても、ドアを開けてくれなかったり、「放っておいてくれ」と支援を強く拒否されたりすることは日常茶飯事です。根気強く訪問を重ね、挨拶や短い会話を繰り返す中で、少しずつ警戒心を解き、話を聞いてもらえるようになるまで、長い時間がかかることも少なくありません。次に、問題の複合性です。ゴミ屋敷という目に見える問題の裏には、精神疾患、認知症、身体疾患、知的障害、発達障害、アルコール依存、経済的困窮、家族関係の破綻、社会的孤立など、複数の問題が複雑に絡み合っていることがほとんどです。そのため、単にゴミを片付けるだけでは根本的な解決にはなりません。それぞれの問題に対応できる専門家(医師、看護師、ケアマネジャー、精神保健福祉士、弁護士など)との連携が不可欠となり、多職種チームでのアプローチが求められます。支援計画を立てても、本人の意欲の波や体調の変化、あるいは家族の協力が得られないなど、計画通りに進まないことも多々あります。一度は綺麗に片付いても、根本的な問題が解決されなければ、再びゴミ屋敷状態に戻ってしまう「リバウンド」のリスクも常にあります。そのため、片付け後も継続的な見守りや生活支援、精神的なサポートが必要となります。そして、支援者自身の精神的な負担も大きな課題です。劣悪な環境での作業、本人からの暴言や拒絶、解決の糸口が見えない状況などは、支援者の心身を疲弊させます。支援者がバーンアウトしないためのケアや、チーム内でのサポート体制も重要になります。ゴミ屋敷とセルフネグレクトへの支援は、長期戦であり、多くの困難を伴います。しかし、その人の尊厳を守り、再びその人らしい生活を取り戻すために、支援者は諦めずに寄り添い続けているのです。