いわゆるゴミ屋敷と呼ばれる環境で子ども時代を過ごした経験は、その後の人生、特に人間関係や結婚観に、知らず知らずのうちに影響を与えていることがあります。物が溢れ、常に雑然とした家の中で育った私は、大人になった今でも、心のどこかにその影響を引きずっているように感じます。結婚を考え始めたとき、その不安はより一層、明確な形を取り始めました。まず感じるのは、整理整頓や清潔さに対する一種のコンプレックスです。人並み以上に綺麗好きになったり、逆に、片付けようとしてもどこから手をつけていいか分からず、無力感に襲われたり。自分の家を持つこと、それを維持していくことへの自信が持てないのです。パートナーの部屋が少し散らかっているだけでも、過剰に反応してしまったり、将来、自分の家も実家のようになってしまうのではないかという恐怖を感じたりすることもあります。また、人を家に招くことへの抵抗感も根強く残っています。子どもの頃、友達を家に呼べなかった経験から、自分のプライベートな空間を見られることへの羞恥心や恐怖心が染み付いているのです。結婚して新しい家庭を築いても、心からオープンに人を迎え入れることができるだろうか、という不安があります。さらに、親との関係性も複雑です。実家の状況を恥ずかしく思い、親に対して複雑な感情を抱いている場合、それがパートナーとの関係や、相手の家族との関係にも影響してしまうのではないかと心配になります。親のようにはなりたくない、という思いが強すぎるあまり、パートナーに対して過度な期待や要求をしてしまう可能性もあります。ゴミ屋敷で育ったという経験は、決して消えるものではありません。しかし、その経験があったからこそ、人一倍、安定した家庭や心地よい空間への憧れが強いのかもしれません。大切なのは、過去の経験に囚われすぎず、自分の心の傷やコンプレックスと向き合い、理解してくれるパートナーと共に、自分たちらしい新しい家庭を築いていくことだと信じています。負の連鎖を断ち切り、自分の子どもには同じ思いをさせたくない。その強い思いが、未来への希望となっています。