親から引き継いだ実家が、兄と弟の共有名義になっているケースで、その家に住む兄がゴミ屋敷化させてしまった場合、弟が被る精神的・経済的苦痛は計り知れません。共有名義とは、その不動産の全ての部分について、それぞれの持分に応じた権利を持っている状態を指します。つまり、弟は自分の持ち分を守るために、兄に対して清掃を求める法的権利がありますが、現実には「家族だから」という甘えや、長年の確執が邪魔をして話し合いが進まないことが多いのです。また、兄が勝手にゴミを溜めている状況を放置しておくと、弟も共有名義人としての責任を問われる可能性があります。近隣住民から訴訟を起こされた場合、損害賠償責任は共有者全員に及ぶのが原則です。このような事態を解決するには、共有物分割請求という法的手続きを検討せざるを得ないこともあります。具体的には、裁判所を通じて家を売却し、現金を分けるという方法ですが、ゴミ屋敷のままでは買い手がつきません。結局、弟が自費で清掃を代行し、その費用を兄の持ち分から差し引くといった複雑な調整が必要になります。親族間の名義問題は、一度こじれると修復が困難です。ゴミ屋敷という目に見える問題の裏には、相続時の不公平感や兄弟間の優劣意識が隠れていることが多いため、弁護士などの第三者を介して、名義を一本化するか売却するかという最終的な出口を早期に見出すことが、共倒れを防ぐ唯一の方法です。ゴミ屋敷問題の多くは、所有者の高齢化や管理意識の低下から始まります。自分が将来、子供や近隣に迷惑をかけないためには、元気なうちから不動産の名義と家の管理について真剣に考える「住まいの終活」が欠かせません。まず行うべきは、現在の自宅の名義が正しく自分になっているか、登記情報を確認することです。もし先代の名義のままであれば、すぐに相続登記を行いましょう。次に、自分が住めなくなった後、その家を誰に託すのかを明確にすることです。遺言書を作成し、名義の指定だけでなく、万が一ゴミ屋敷化してしまった場合の清掃費用の手当てまで決めておくと安心です。また、最近注目されている「家族信託」を活用するのも一つの手です。信頼できる子供に名義を信託しておけば、自分が認知症などで判断能力を失っても、子供の判断で清掃業者を呼んだり、家を売却したりすることが可能になります。ゴミ屋敷化の初期段階で適切な介入ができる権利を与えておくことは、本人にとっても尊厳を守ること繋がります。さらに、家財道具を定期的に見直し、名義人としての責任として「家を健全な状態に保つ」という習慣を持つことが、最高の予防策となります。物はいつの間にか増えていきますが、名義という重い権利を持っている以上、その空間をコントロールする義務があるという意識を持ち続けること。それが、最期まで自分らしく、美しい環境で過ごすための知恵であり、次世代への最大の贈り物になるのです。